2026.08.17 / 現地打合せ / 山田園芸
普及指導員も、農業者も、県庁も、同じ一つの基盤を使う。
ただし「誰のデータか」で見えるものが変わる。
株式会社Local Dive / 西村 吉正
愛知県農業水産局 農政部 農業経営課 御中
01 — 本日お見せするもの
この場で、実際にログインして操作していただけます。三者の立場を切り替えて、同じデータがどう見えるかをご確認ください。
デモを開く スマートフォンでもそのまま動きます(音声入力もお試しいただけます)
山田 裕也 さん
山田園芸(キク/スプレーマム)
伊藤 広孝 さん
中央普及センター 農業革新支援専門員
農業経営課
中山 担当課長/橋詰 主査/大橋 様
ログイン画面で立場を選ぶだけで切り替わります。同じ記録が、立場によって「全文」「一部」「匿名」「非表示」と変わる様子をご覧ください。
02 — 一番の論点
普及指導員に使ってもらうこと自体は難しくありません。難しいのは、農業者が安心してデータを預けられる状態をつくることです。
・自分の反収や単価が、近隣の農家に伝わらないか
・経営の数字まで行政に見られるのではないか
・一度預けたら取り消せないのではないか
・指導に必要な情報にはアクセスしたい
・県として事業効果を数字で評価したい
・病害虫の発生傾向は県内横断で把握したい
「全部見せる/全部見せない」の二択にせず、データの種別ごとに、どこまで届くかを農業者本人が決める設計にすれば解けます。本システムはその考え方で作っています。
03 — 設計の中核
すべての記録に「どこまで届いてよいか」を持たせます。農業者が種別ごとに設定し、記録ごとにさらに絞ることもできます。
| データの種別 | 山田さんの設定 | 担当普及員 | 管内の普及員 | 県庁 |
|---|---|---|---|---|
| 作業記録(定植・摘心など) | 普及センターまで | 全文 | 全文 | 非表示 |
| 防除記録(農薬・希釈・散布量) | 普及センターまで | 全文 | 全文 | 非表示 |
| 出荷・収量 | 担当普及員まで | 全文 | 非表示 | 非表示 |
| 環境制御(電照・換気) | 普及センターまで | 全文 | 全文 | 非表示 |
| 経営(重油購入・単価) | 自分だけ | 非表示 | 非表示 | 非表示 |
※ 実効範囲=min(種別ごとの設定、記録ごとの設定)。厳しいほうが必ず優先されます。
※ 判定はデータベースへの問い合わせ時に行われます。画面での出し分けではないため、APIやAI経由でも同じ結果になります。
03b — 現場が続けられる形にする
権限を細かくすると、必ず「毎回選ぶのが面倒で使われなくなる」問題が起きます。 そこで選ぶのは最初の一度だけにして、あとはAIが1件ずつ自動で仕分けます。
金額・単価/取引先・販路/第三者の個人名と事情/苦情・評価/健康・家庭の事情。
AIが落ちていても、通信が不安定でも必ず効きます。
文脈でしか分からない機微を追加で検出。
AIが「安全」と言っても①の判定は取り消しません。緩める方向には働きません。
| 話した内容 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 3号ハウス、白さび病、ローテ③のジマンダイセン1500倍300L、1時間20分 | 県(匿名)まで | 機微なし |
| 秀品2400本。単価58円で厳しい。パートの田中さんが腰を痛めて早退 | 自分だけ | 販売単価・第三者の個人名と事情 |
| 定植完了。仲買のあの担当者は信用できない | 自分だけ | 取引先・苦情 |
判定と理由は必ず画面に出ます。ブラックボックスにはしません。
03c — 導入のしかた
農業者に新しいアプリを覚えてもらう設計にはしません。いま使っている画面のまま、モードを足すだけです。
今まで通りの「山田園芸 作業マニュアルDB」。記録は誰にも渡りません。
導入直後はここから始められます。
担当の普及指導員が許可された範囲だけを見られるようになり、コメントと支援計画が返ってきます。
画面・操作は変わりません。
踏み込んだ指導を受けたい方向け。経営の数字だけは守ります。
栽培・防除・環境は共有し、経営・個人情報は自分だけ。
まず担当普及員だけに絞る。慣れたら広げられます。
単価・人件費・作業者名は、どのプリセットでも既定でOFFです。ここを勝手に広げることはしません。
03d — 普及員が持ち込む知識
普及指導員・県が「指導ナレッジ」に資料を登録すると、農家側のAIも普及員側のAIも それを根拠にして答えるようになります。一般論ではなく愛知県の指針で答えさせるための土台です。
「白さび病が出た場合は、次回の散布はローテーション④に切り替えることをお勧めします。指導指針によると、
連用を避け、耐性リスクを抑えるためにローテーションを行います。…なお、薬剤の希釈倍率と使用時期の最終確認は人が行ってください。
根拠:【指導指針】白さび病防除のローテーション(R7年版 P.42)/2026-08-14 の巡回指導記録/2026-08-14 の防除記録」
回答には必ず「参照した記録の件数」「参照したナレッジの件数」「使ったモデル」を表示します。 権限外の項目は参照対象にも入りません。
04 — 普及指導員の画面
権限外の記録を完全に隠してしまうと、普及員は「本当にデータが無いのか、見せてもらえないのか」が分かりません。 そこで件数だけを開示します。
めぐりトマト/出荷・収量:1件 ・ 山田園芸/経営:1件
件数だけをお知らせしています。本文・農薬名・数量は取得していません。
必要な場合は、農業者ご本人に公開範囲の変更を相談してください。
伊藤専門員(中央普及センター)は山田園芸とめぐりトマトの担当です。東三河管内の鈴木農産は担当外かつ所管センターが異なるため、 件数すら表示されません。担当外の産地情報が横に流れることを構造的に防ぎます。
「同じ普及員だから全部見える」ではなく、「担当だから、この範囲まで見える」。割当と同意の二重の関門を通ります。
05 — 農業者の画面
「3号棟のスプレーマム、白さび病が下葉に出始めたので
マブリック水和剤20を2000倍で300リットル散布した」
↓ AIが自動で整理
| 棟 | 3号棟 |
| 作物 | スプレーマム |
| 病害虫 | 白さび病 |
| 農薬 | マブリック水和剤20 |
| 希釈倍率 | 2000倍 |
| 散布量 | 300 L |
規則ベースの抽出を必ず先に通し、その上でAIが補完します。通信やAI側の不調でも記録が失われません。
農業者は種別ごと・記録ごとに公開範囲を変更できます。下げた瞬間、過去に共有した分もさかのぼって届かなくなります。
山田さんの画面で「防除」を自分だけに変更 → 伊藤専門員の画面を開き直すと、防除記録が消え、 代わりに「権限の外にある記録が3件」と件数だけが増えます。
「預けたら終わり」ではないことが目に見えるため、最初の一歩のハードルが大きく下がります。
06 — 県庁の画面
県庁からは、農業者が「県(匿名)まで」と設定した記録だけが、匿名IDで届きます。
・匿名ID(AI-KIKU-001 など)単位の記録
・品目別/種別別の件数
・県内で発生している病害虫の傾向
・普及指導の実施件数と論点
・参照できなかった記録の件数(母数の把握)
・経営体名・所在地・棟名
・出荷単価、反収、経営の数字(同意が無い限り)
・農業者個人が特定できる情報
「参照できない記録が何件あるか」は県庁からも見えます。分母が分かるので、実証の稼働状況・記録件数の推移といった KPI測定は、個別経営体のノウハウに触れずに成立します。
07 — 既存AIとの接続
すでに動いている栽培AIを止める必要はありません。MCP(Model Context Protocol)で、この基盤に安全に接続します。
{
"mcpServers": {
"yamada-engei-ai": {
"type": "http",
"url": "https://yamada-engei-ai.amazing-flag.workers.dev/mcp",
"headers": { "Authorization": "Bearer <利用者ごとのトークン>" }
}
}
}
既存の山田園芸MCP(get_greenhouse_status/search_work_manuals/get_work_analysis/add_work_record)はツール名ごと温存し、権限つきツール(set_field_visibility/revoke_record_sharing/create_visit_report/add_extension_comment/get_pilot_kpis/access_report ほか)を追加。見えるツール数は農家14・普及員14・県2と、役割で変わります
デモ画面の「AI連携(MCP)」タブから、その場で実際のリクエストと応答をご覧いただけます。
08 — 普及業務そのものの記録
普及指導員が現地で助言した内容を、根拠資料つきで残します。農業者ご本人の画面にも同じ内容が表示されます。
下葉の初発を確認。連続散布による耐性リスクを避けるため、次回はDMI剤ではなくQoI剤系にローテーションすることを助言。散布間隔は7〜10日。
根拠:愛知県 花き病害虫防除指針 R7年版 P.42
担当外の経営体には登録できません(サーバ側で拒否し、監査ログに残ります)。
部会・検討会・県との打合せを、その場で録音して文字起こしし、要約・決定事項・宿題に整理します。
要約:盆需要は前倒し傾向、名古屋市場単価は前年比やや高。白さび病の発生が例年より早く、防除暦の前倒し見直しが議題に。
決定事項:防除暦の前倒し改訂案を次回までに作成/試験場の改訂指針を部会で共有
宿題:JA指導員 防除暦ドラフト(8/25まで)
本日のこの打合せも、その場で記録してお見せできます。
09 — 監査とガバナンス
公的事業として最も問われるのは、事故が起きたときに説明できるかどうかです。許可したアクセスも、拒否したアクセスも残します。
| 日時 | 利用者 | 経路 | 操作 | 結果 | 理由 |
|---|---|---|---|---|---|
| 08-17 13:12 | 伊藤 広孝(普及指導員) | 画面 | records.list | 許可 | 6件返却/2件は権限外 |
| 08-17 13:14 | 山田 裕也(農業者) | 画面 | consents.update | 許可 | 防除 → 自分だけ |
| 08-17 13:15 | 伊藤 広孝(普及指導員) | 画面 | visits.create | 拒否 | 担当外の経営体 |
| 08-17 13:16 | 大橋(県庁) | MCP | create_record | 拒否 | スコープ不足 |
AIは判断支援です。農薬の希釈・使用時期は必ず人が最終確認する運用と、画面上の注意表示を組み込んでいます。
指導内容には根拠にした試験場資料を必ず添えます。誤りがあれば即座に上書きでき、履歴も残ります。
データは県・実証グループ側に帰属します。他社AIの学習には使いません。
10 — 令和8年度事業への当てはめ
| 実証枠 | 品目 | 対象 | 本システムでの位置づけ |
|---|---|---|---|
| 個別生産者実証 | キク(スプレーマム) | 山田園芸 | 音声記録・環境制御・部会連携。本日のデモの中心 |
| 個別生産者実証 | トマト(施設・養液) | めぐりトマト | 環境データの匿名共有を県庁まで許可した例 |
| GAP適合実証 | キャベツ(露地) | 大規模露地生産体 | 防除記録の音声入力とJGAP帳票の自動出力 |
| 共通基盤 | 権限管理・同意管理・監査ログ・MCP連携・普及指導記録 | ||
実証開始時に各普及課・生産者の実作業時間をベンチマーク測定し、終了時に削減効果レポートを提出します。
※ 予算規模は「小規模実証・戦略作成・人材育成」合計17,000千円の前提で再整理いたします。
11 — 本日ご相談したいこと
本日お見せした4段階(自分だけ/担当普及員/普及センター/県匿名)で過不足はないか。
JA営農指導員・農業総合試験場を独立した段階として追加するか。
試験場の指導要領・防除暦・研究成果報告のうち、AIの根拠データとして提供いただける範囲。
県・主要JAの帳票様式サンプル(JGAP対応の出力最適化のため)。
普及指導員のアカウント発行主体と、県SSO/多要素認証との接続方針。
契約主体(県から一括委託か、JA等とのコンソーシアムか)。
本日のデモはこのURLのまま残します。県庁にお戻りになってから、庁内の方にもそのまま操作いただけます。
ご要望があれば、権限の段階や画面の項目は次回までに反映します。